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憲法13条 「公共の福祉」ってどういうこと?

だけど,そんな風に一人一人が大事っていうから,みんなが勝手になってしまうんじゃないの?
違います。憲法は,ちゃんと調整の方法を示していますよ。それが,「公共の福祉」という考え方です。憲法は,「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めています。
難しい言い方だね。
そうですね。この言葉は,特殊な「法律の専門用語」と考えてください。国語辞典で,「公共」「福祉」と引いてみても,おそらくよく分からないと思います。
じゃあ、「公共の福祉に反しない限り」尊重するってどういうこと?
さっき言ったように,一人一人を大事にする憲法は,当然,一人一人が自由に生きることを認めます。ただ,すべての人に自由を認める以上,どうしてもそれぞれの自由がぶつかる場面が出てきます。そこで,憲法は,自由と自由が現実にぶつかった時にだけ,その具体的な状況を天秤にかけて調整することにしたんです。このような調整の仕方を「公共の福祉」と呼ぶんです。
例えばどんな場合があるの??
そうですね。例えば,憲法は21条で「表現の自由」という権利を保障しています。自分の考えていることを言葉や形にして他人に伝えるということは,自分自身が人として成長していくために大変大事ですし,また,権力などを自由に批判できることは民主主義の大前提となるために,憲法はこれを人権として定めたんです。
じゃあ,どんなことでも自由に発言していいの?
そこが難しいところで「公共の福祉」の出番ですね。例えば,個人のプライバシーに関することや,名誉を傷つけることをSNSに投稿したりすることは,違法なものとして損害賠償の義務を負ったり,さらには犯罪として処罰されることもあります。
ただ,さっき言ったように,表現の自由はとても大事な権利ですから,その表現の仕方,傷つけられたと主張している人の立場,社会に影響を与えるような職業,政治家や公務員なのか,あるいは全くの一般の人なのか,などいろいろな要素を天秤に乗せてどちらが我慢するかを決めることになります。
面倒くさいんだね。
そうですよ。でも,憲法はそうやって面倒くさくても,いちいち,よく話し合って検討して調整する,という方法を選んだんです。それが民主主義だと思いますよ。
分かりやすく表現することは大事ですが,だからといって,いさましいワンフレーズでなんとかなるものではない,ということはよく分かってほしいと思います。