1 憲法9条自衛隊明記の中身ってどんなの?
自民党は2018年3月25日の自民党大会で9条に自衛隊を明記する改憲案を打ち出しました。憲法改正推進本部は3月14日の執行委員会で9条改正についての7つの条文案をとりまとめました。本命視する条文も出てきたという報道がされています。
新聞報道によると「第9条の2 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。 ②自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」などの案がでていますが、まだ確定していません。
2 自衛隊を憲法9条に明記すれば、自衛隊違憲論は終わるのか?
安倍首相によると、憲法違反かもしれない自衛隊員たちに何かあれば命を張ってくれというのはあまりに無責任ということを理由としてあげています。憲法を変えて自衛隊が違憲かどうかという議論を終わらせるのが目的であると説明しています。
では、自衛隊を憲法に明記すれば、自衛隊が違憲という議論は終わるのかというと、終わりません。
今回の改憲案の1つは、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織としての自衛隊」を位置づけると言っています。
そうなると、自衛隊を憲法に明記しても、自衛隊の装備や人員規模という現在の実態が違憲であるという議論は延々と続いていきます。自衛隊の現状を見ないで、憲法にただ明記しても違憲かどうかの議論に終止符を打つことはできません。
にもかかわらず、少子化対策など他の喫緊の課題に優先して、850億円もかかる国民投票(2007年の衆院法制局の試算)をする意味があるのかよく考えないといけないと思います。
3 自衛隊を9条に明記しなければ、自衛隊員は気の毒なのか?
自衛隊明記の理由について、憲法違反かもしれない自衛隊員たちに何かあれば命を張ってくれというのはあまりに無責任であると述べています。たしかに東日本大震災や様々なときに自衛隊が頑張ってくれている、そういう自衛隊が違憲というのはかわいそうだと思う方もおられるとおもいます。
自衛隊員のためを思って、安倍首相は自衛隊を9条に明記しなければいけないといっているのでしょうか。
安保法制では、自衛隊員に担わせる危険な兵站活動(武器や弾薬の輸送や供給)を安全な「後方支援」と言い換えました。南スーダンの日報問題では、現地隊員の日報に現地で「戦闘」があったことが多用されているにもかかわらず、自衛隊員には引き上げさせず、国会で「衝突」と言い換えました。このように、言葉を言い換えて、自衛隊員の危険な任務を偽っています。
本当に自衛隊員のためを思うのだったら、憲法を自衛隊に明記するより以前に、危険な任務は危険であることを認め、危険を冒してでもそれをする必要があるのか、危険をなるべく少なくするにはどうしたらいいのか正面から議論をするべきだけど、それをしなかった。
その方がよほど気の毒ではないでしょうか。
4 9条に明記する「自衛隊」とはどんなものか
そもそも、自衛隊が違憲かどうかは、憲法9条2項に定める「戦力」に該当するかどうかです。政府は、自衛隊を自衛のための必要最小限度の実力組織と説明をしていました。
自衛隊が憲法に違反するということを唱えている有力な学者の意見は 「現在の自衛隊の人員、毎年の防衛費の予算規模、持っている装備からしても、自衛ということだけでは説明ができない」、必要最小限度の実力組織ということでは説明できないと言っています。
また、安保法制が成立した後の自衛隊は、限定的と政府は言っているけれど、集団的自衛権といって、自分の国が侵略されなくても他国を攻撃できる自衛隊になりました。アメリカとの演習も格段に増えています。現在の自衛隊の装備も自衛ではなく、他国を攻撃できる武器も多く、防衛予算も年々増加し、年間5兆円を超え、2019年度予算案においても過去最高の予算を計上しています。
5 自衛隊を9条に明記するだけで現状は変わらないと言っているけど本当か
政府は自衛隊が明記されていないのにこれまで一貫して自衛隊を合憲だと説明してきました。自衛隊の存在を明記してあげるからより一層の命を張る危険な任務をやってくれといっているように聞こえます。危険性をごまかしながら自衛隊の任務を拡大し続けた安保法制の経験から、何も変わらないといって自衛隊を明記しても、結局自衛隊の性格や内容を大きく変わる疑念を抱いてしまいます。
4のような自衛隊が、自衛のための必要最小限度の実力部隊として憲法に明記されれば、上記の装備も予算も拡大し続ける自衛隊が国民に支持されたといって、さらなる加速を生んでいくことも予測しなければいけないと思います。